(5)次は、最新技術が等身大の車体に宿るモビリティ

 2013年になり、HONDAのNC700Xが、わが家にやって来ました。
 ご覧のとおりロードバイクなのですが、気が向いたら未舗装路にも分け入りましょうというクロスオーバーというジャンル。
 排気量は669ccと手ごろですが、車重は228kgもあって、X-Eleven(1,100ccで222kgでした)よりも重たい。 
 さて限られた時間の試乗でも、このNC700Xの際立った特徴が分かります。
 HONDAは開発前に欧州のユーザーに調査をしたところ、常用速度域は140km/h以下の使用頻度が90%、回転数も6,000r/minが80%と想像以上に低かったことから、この使用域での性能と燃費に特化した商品開発をしたそうです。
 エンジンは並列二気筒で、クランクの位相が270°
 二気筒の点火間隔が不等間隔になるために、独特の鼓動感と駆動力があります。
 特性は、常用回転域での力強いトルクと低燃費を求めた、割り切りの強いもの。
 回転数は伸びない代わりにトルクは豊かで、トランスミッションをぽんぽんシフトアップしていると、あっという間に前車に追いつきます。
 そしてエンジン以上に特徴的なのが、トランスミッション。
 DCT(Dual-Cluch-Transmission)と言って、クラッチレスなのです。
(なお通常のクラッチ付きも選ぶことができます)
 このDCTは、自動車のAT(トルクコンバーター〜流体力学〜を使う)や、スクーターのCVT(ベルトを回す滑車の径が変わる)とは構造が違って、電磁的にクラッチを切り、電気モーターで歯車を替える(変速する)構造。
 クラッチは奇数段と偶数段とで2系統あって、これで歯車を互い違いに変えてゆくので、変速ショックが少ないのが特徴です。
 アクセルグリップを回しっぱなしで走るモードと、ステアリング・バーわきのボタン(あるいは足先のフットレバー)でマニュアル・シフトができるモードとがあります。
 さて、その操作感はというと、ひじょうにテクノロジーを感じます。
 機体がカシャカシャ…と最適な変速をしてくれて、ライダーは変速をする手間がまったくない。
 Buellもトルクが豊かで高いギアを選べる単車でしたが、NCはこちらから指定しない限り、車体が最適なギアを選んでゆくため、街中でもどんどん6速に入ってゆきます。
 でも一番驚くのは加速よりも減速をしたときです。
 勝手に、車速に合ったシフトダウンをしてくれるのです。
 そのためAT車特有の、空走させながらブレーキを調整して前車との車間距離を保つ… あの退屈さはまったくありません。
 穏やかにエンジンブレーキもかかる、生き生きとした減速感です。
 また走行中でも、ペダルひと踏みでシフトダウンができる点も秀悦。
 とび込んでいったコーナーに予想以上の勾配が待ち受けていても、そこは人間が適切なギアにおとすことができます。
 
 ブレーキは、コンバインド(前後輪が連動する)のABS(アンチロック)構造。
 NCのものはX-Elevenのコンバインド・ブレーキよりもさらに進化していて、後輪(フット)ブレーキを効かせると前後輪が連動しますが、前輪ブレーキ(レバー)だけを効かせるときは後輪ブレーキは連動しません。
 つまり単車特有の身のこなしの邪魔をしないというワケです。
 制動は、タッチにクセはあるものの、効き自体は圧倒的。
 おまけにノークラッチですから、停まったとたんエンストしてグラリとくる気遣いも要りません。
 停止すると勝手に1速を選ぶこともあって、急停止したとたんに急発進する、といった芸
当すら可能です。

 特徴的なラゲッジ・スペースも挙げておきましょう。
 NCの燃料タンクは後部座席の下にあります。
 通常の燃料タンクのところは、ヘルメット1個が収容できる物入れになっています。
 発想として目新しいものではありませんが、単車には鍵がかかる物入れがありませんので、
大きいラゲッジ・スペースは有れば有ったで嬉しい。
 
 納車されたホンダドリーム横浜都築店で。
 さすがにHONDAの直営ディーラー、この日は神奈川県警の白バイが、整備のために続々と持ち込まれておりました。
 左グリップにクラッチレバーはなく、代わりにあるのは+(アップ)と、-(ダウン)のシフトレバー。
 また坂道駐車で困らないように、パーキングブレーキ(矢印のレバー)も装備されています。
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