金谷旅館の「千人風呂」は、相変わらず素晴らしい温泉でした。
総檜(ヒノキ)の浴槽は大きく、木造のプールのよう。
浴槽の底は複雑な段差がつけられています。
湯口からは熱い湯が豊富に湧き、その浴槽に渦を巻いてかけ流されます。
ぬるめが好きな方は、湯口から遠くに浸かれば良い。
熱いのが好きな僕は、湯口のそばに陣取ります。
木の縁に首をもたせて、ぼんやりと湯を愉しむ。
陶酔感を覚える、ひととき。
お客さんは、終始湯口のわきに陣取っていた中年男性と、ひと組のご夫婦(千人風呂はバスタオル巻きで混浴可能です)だけ。
一人当たりの専有湯量は、ぜいたく過ぎるほど。
この千人風呂のくつろぎは、まさに竜宮城である。
隣接して坪庭ふうの露天風呂もあり、これも意外に落ち着いて良かった。
こちらは小さなぶん、どこに陣取っても熱め。
お湯に浸かって、恨めしげに雨の空を見上げる。
泉質じたいは普通の弱アルカリ性低張性高温泉で、透明のさらりとした肌あたりです。
風呂あがりの温浴感はすぐに消えるので、どちらかといえば夏向きかな。
いずれにせよこの6年間にいくつもの名湯に行きましたが、それでもなおここの素晴らしさは白眉。
「金谷旅館」 0558-22-0325
入浴料¥1,000-
静岡県下田市河内114-2
蓮台寺温泉を発つと、ついにどしゃ降り。
「何なんだっ!予報ではどしゃ降りとは言ってなかったぞっ!」
あたりは暗くなって、焦る気持ちを抑えつつ、でもヘルメットの中では他人には聞かせられない言葉を毒づく。
17時に下田のライダー宿に到着。
ご主人「おおっ、薪ストーブ焚いて待ってたぞ。遠慮せず濡れた合羽とかどんどんこっちによこしなさい」
雨のなか慌ただしくチェックインする。
ご主人「わはは、予報外れて大変だったねえ。なに家に入っちまえば、こっちのもんだ(笑)」
こういう暖かい歓迎は心に沁みる。
「ワンゲルハウス」はライダー仲間では有名な宿で、基本的にはドミトリー形式の山小屋。(ご主人ご高齢につき、2018年頃廃業されました)
凝り性のご主人の趣味(単車、オーディオ、革細工、アウトドア全般)が溢れる秘密基地のような宿だが、ご主人も奥様ももの静かな方で、一人旅には落ち着ける。
この日は、宿泊者は僕ひとりでした。
入浴して身体も温まったところで、夕食をいただきます。
サービスで付く自家製ビールと、自家製の鹿肉と鱒の燻製(上)
メインは味噌仕立てのイノシシ鍋(下)
これにご飯と味噌椀、サラダが付きました。
どれも美味しく、山の恵みに感謝して、満腹に。
イノシシ鍋についてコメントしますと、これは天城で獲れた半身18kgという大物で、猟師さんから分けてもらったそうです。
山で仕留めて、人力で山から下ろして、解体場に運んで、身体を洗ってあげて、そしてさばく…途方もなく大変な手間を短時間でかけてあげて、こうして精肉になるとのことでした。
正直のところ僕の味覚は牛>豚>鶏>鹿>猪なのですが、このイノシシ肉が最上の逸品であることはよく分かります。
なにしろまったく臭みがなく、クセのないベーコンのような味。
けっこうな量でしたが、きれいに平らげることができました。
ベッドに戻ると雨天走行の疲れが出て、すぐに就寝。
きょうの走行は222kmでした。
ベッドからドミトリー風の室内を臨む。
室内にはご主人の愛車が並べてある。
天井からぶら下がるのは僕の濡れた衣類で、一晩でパリッと乾きました。